デジタル変革を妨げる「ベンダー依存体質」
では、なぜこの状況が日本企業のデジタル変革を妨げているといえるのか。ポイントは3点あると考えられる。
1.事業モデル変革の阻害
市場環境が目まぐるしく変化するVUCA時代では、既存事業の改善や新規事業の立上げを迅速に進めることが重要だ。情報システムにも迅速な対応が求められる。ITベンダーの役割は、委託された機能をきちんとつくり上げることであり、事業モデルのあるべき姿を提案・共同検討することではない。事業を早く立ち上げるために「簡易機能を実現してまず試そう」といった提案をするモチベーションも大きくない(将来的に大きな開発案件が想定される場合は例外だが)。ITの検討や実装が遅れると、事業モデルの変革に影響が及ぶ。
2.業務改革の阻害
現行の業務に合わせるようにシステム開発を続けると、業務が非効率であっても、そのままシステム化が進むことになる。本来であれば、業務上の無駄を排除するなどの考慮をすべきだが、ベンダーからすると開発量の多い方が高収益となるため、敢えて機能を削減する提案をする必要はない。結果として、業務の効率化が進まず、開発費も余分に支払うことになる。
3.人材育成の阻害
ベンダーから知恵をもらうのは良いとしても、社内におけるIT人材の強化は必要なはずだ。だが、十分なIT教育が行われているケースは少ないようだ。外注費はベンダーに対する教育費となり、社内でのIT人材の育成は進まない。中長期的な視点で採用・育成計画を定め、「IT人材の内製化」を進めていかない限り、社員のデジタル感度は永久に向上しない。